9回目となるイベント業界アカデミーですが、今回は「施工屋さん」について講義を進めたいと思います。
イベント業界の人達にとっては必ず関連がある「施工屋さん」。
知っている人は知っていますが、知らない人にとっては全く分からない会社かと思います。イベントの表側だけを見ているとなかなか見えない部分ですが、イベントの基礎となる部分を担当しますので、ぜひとも就活候補の1つとしてください。
■施工って?
イベントの企画や運営は、一般参加者にとっても意外と見えています。直接関連することがありますからね。では施工屋はどの部分かといいますと、イベント現場で目に見えているものの大半が施工屋さんのお仕事です。
下の画像をご覧ください。
どの部分が施工屋さんのお仕事か分かりますか?
・ステージ
・トラス(照明が取付けられている柱)
・テント
・テント内の机
・イントレ(手前の足場)
・テント
・椅子
などなど、写真の中に見えている物は
全部施工屋さんが準備したものです。
■ハードとソフト
イベント業界でなくとも、「ハード面」「ソフト面」という業種の区分けがあります。ハードというのは、目に見える「物質」を用意する人達です。
テントを初めとし、テーブル、カウンター、椅子、など、人々が触れることが出来るものをハードとよび、企画や運営など、イベント内容に関わる目に見えないサービスをソフトと呼んでいます。
もともと何もないイベント会場に、イベント会場らしいテント、壁面、アーチ、展示台などを用意することが施工屋さんのお仕事です。
なので、施工屋さんはハード(物質)と呼ばれることもあります。
■イメージング
一般の人たちがレストランや居酒屋さんに行った時に、目に見えるものってなんですか?
まずは、誰もが行ったことのあるファミレスでイメージしてみましょう。
あなたがファミレスに行く時の風景をイメージしてください。
まず、何が見えますか?
まず、建物ですね。つまり「壁」と「屋根」です。
もちろん壁には「窓」もついています。
その周辺には何がありますか?
「のぼり」が立っていて、「自転車置き場」には「自転車」がありますね。
ちょっとした「植栽」があったりします。
それでは、入口に進みましょう。
入口には「ドア」があります。その下には「フロアマット」がありますね。
フロアマットにはロゴが入ってたりしますか?
入口を入ると待合用の「ソファ」とともに、「記入台」に置かれた「記入用紙」があります。もちろん「ペン」と「紐」がついてますね。
用紙を挟む「クリップ」や記入を促す「ご案内サイン」は「記入台」として考えましょうか。
それでは、席に進みましょう。
ここからはイメージしやすいでしょう。
「テーブル」「椅子」「ドリンクカウンター」はきっとイメージ出来ますね。
ドリンクカウンター内の備品はちょっと多いので今回は省略しますが、細かく思い浮かびますか?消耗品なのか、使い回し備品なのか分かるとさらに良いですね。
店員さんを呼ぶ「コールボタン」や「番号表示ボード」、その「コールシステム」も重要ですね。
スタッフが着ている「ユニフォーム」はちょっと施工からは離れますが、イメージできてると素晴らしいです。もちろん「オーダー用のタブレット」と「システム」もあります。
それでは、次は天井に目を移してください。
「エアコン」や「照明」「換気扇」「スピーカー」「煙探知器」とともに「非常灯」も目につくでしょう。
あるのは知っているけど、あえて見ないエリアだと思います。
さらに見えないエリアとして、厨房エリアとスタッフエリア、俗に言う<バックヤード>と呼ばれるエリアを想像してみましょう。
キッチンには大きな「冷蔵庫」や「冷凍庫」があるでしょう。
調理をする「調理台」を始め、「包丁」「皿」「カップ」とともに、「食材」もありますね。そして、料理をするために必要な「火(ガス)」「電気」「水道」もありますね。
さて、今までイメージしてきた「物」は、全てハードとして用意するものになります。
イベント会場であれば、みなさんが目に見えているけどもそれを「準備物」として見ていない「物」です。
施工屋さんは、制作会社とともに、イベント会場に何が必要なのか、「イメージ」します。
それが仕事を行う上で大切な「イメージング」です。
イベントの仕事をするようになると、日常生活の中でどのようなものがどのように使われているのかとしても気になるようになります。
屋外のイベントで「カフェを作って欲しい」と言われれば、カフェに必要なものを準備しなければなりません。
そのため、イベント屋さんは常にイメージングを無意識に行っています。
現場に行って「あれが足りない!」「これがない!」と言われるのは辛いですからね。
■施工屋さんのお仕事、まだまだ
施工屋さんは、まず目に見えている全ての物を準備できるような協力会社が必要です。
今まで述べたような物品を全て1社で取り揃えているところはほとんどありません。
いくつかの会社から色々と借りてくる必要があります。
イベントというのはほとんどが短期間で終了しますので、「レンタル」という考え方が最初にきます。
その後、ないものは買う、ということになります。
さて、ようやく施工屋さんの準備段階がこれで終わります。
代理店さんや制作会社から「○○がやりたいので、物品を手配してほしい」と言われ、
何を何個、どこから手配してくるのかが決定されます。
その後、全ての物品を現場に運びます。
そこで必要になってくるのが「運送」です。
運送、配送、搬入出…など呼び方は違いますが、どれも現場に運び込むことです。
当然ながらトラックが必要ですので、「運送会社」に頼みます。
もちろん施工屋さんが持っているトラックもありますよ。
トラックも種類が色々あります。
10tトラック、4tトラック、2tトラックという大きさの種類や、
箱車(はこしゃ)=箱型の荷台があり、雨が降っても濡れないトラックです
平車(ひらしゃ)=荷台しかなく、荷物は雨に濡れます。シートをかぶせるトラックです。
また、ゲート付きか、ゲートなしかも選べます。
現場の状況によって、トラックの大きさや種類を選ばないといけません。
現場にトラックが到着した後は、「設営」です。
バラバラだったものを組み立てていきます。
その際に必要なものが「フォークリフト」や「台車」などの、運ぶ機械です。
場合によっては「クレーン」などの重機も必要になります。
そして、設営に大切なのは「人工(にんく)」です。
本来は「1人が1日働いた時の賃金」を人工と呼びますが、大義では働く人の総称にもなります。
5人工といえば、5名=5名分の賃金という考え方です。
大きな現場になればなるほど人工の数は増えていきます。
一定時間内に完了させなければならないので、完了できるだけの人数+αが必要です。
人工は、「鳶職人」「道具職人」「作業スタッフ」などを始めとし、様々な業種の職人が現場を作っていきます。「木工」「経師」「金物」「電気」「水道」などなど。。。
本当に多くの職人さんが現場を1つ1つ作り上げていくんです。
若い職人さんが減っていき、この職人業界も人手不足な業界です。
施工屋は、「物」「人」「運送」を全て段取りし、現場を組み上げていくため非常に手間がかかります。時間もかかります。お金もかかります。
イベントの予算の半分近くは施工にかかっていても不思議ではありません。
5,000万円の現場であれば2,000〜2,500万円の施工費になることも普通にあることです。
どれだけ、物のクオリティを上げるかによって施工の費用が変わります。
大塚家具で食器を買うのと、100均で揃えるのとでは、費用が違いますよね。
■まとめ
さて、長くなりましたが、施工屋の一部はご理解いただけましたでしょうか。
実はまだいっぱいあります。。。
施工屋さんは専門知識を色々と覚えなければいけません。
木工の知識、電気・ガス・水道の知識、尺貫法、トラス、ステージ、テント、備品・・・
制作会社や代理店さんはそこまで細かく理解出来ていません。
もちろん、制作会社や代理店は他に覚えることが多くありますし、細かな知識を教えてくれる場所も講師もいません。
現場を組み立てながら施工屋さんと話しをしていくうちに覚えていくものです。
施工屋さんはイベント現場の根底部分を作ります。
しかし、施工が終われば現場を離れてしまうため、本番中はほとんど現場にはいません。
撤去が始まる=本番が終わる頃になると現れるものです。
でも、施工屋さんのクオリティこそが、イベント会場の空気感を作っていると言っても過言ではありません。
企画や運営など、表側からも見えるイベント業界だけでなく、イベントを支えている施工屋さんにも興味を持ってもらえると嬉しいです。
写真引用:
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